白岩:今日は海外経験豊かな田島先生にぜひとも「国際社会が日本をどう見ているのか」についてお聞きしたいと思います。まずは先生が勤務されていた国連を通して見てきた日本の姿についてお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
田島:日本はすでに開発面、財政面では随分と貢献していますね。しかし PKO など、いわゆる平和と安全の維持の分野ではもう少し活躍して欲しいと思っています。同じ敗戦国でもドイツやイタリアはその分野でも貢献していますから。
白岩:平和分野での貢献となると最終的には軍事的な貢献も含まれてくるのでしょうが、イラク問題でも賛否が大きく分かれたように、国内外の日本の軍事行動へのアレルギーは根強いですね。一方では期待をされているとはいえども、一方では批判の声もある。
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田島:日本はお金は出しているが血は流さない、難民は受け入れないという不満の声を今でも耳にします。
白岩:湾岸戦争後にクウェートが出した感謝広告に日本の名前がなかったことは我々にとっては大きなショックでした。これも結局はお金は出すが血は流さないという姿勢が批判的に受け取られたからでしょうか。平和への貢献=軍事的貢献となると日本のとるべき立場は難しいですね。平和国日本として別の道もあるのではないかと思うのですが。
田島:もちろんそうですね。平和憲法をもち、それを守り通すことで世界平和に貢献できることもあるでしょうし、それこそが日本の役割だという声も確かにありますね。
白岩:そういった意味でも、私は日本政府には例えば信頼醸成などの予防外交の分野で特に期待をしたいのですが。
田島:日本の国際政治力はこのところ低下してきています。好かれなくてもいいので、国際社会で本当に信頼され、尊敬される日本になって欲しいですね。そのためには信頼醸成構築面での長期の努力が必要でしょう。実績を積むことで結果的にはそれが国際政治力強化にも結びつくんですよ。
白岩:残念ながら経済は一流、政治は三流と長年言われてきていますね。今やその経済さえも危ういところではありますが、実際に国際的な政治のリーダーシップというのは何を指すんでしょう。
田島:中長期のゴールを定めて、それに基づいて行動し、着実に実績を積んでいくということでしょうね。北欧やカナダが良い例です。
白岩:さて、国連改革についてなんですが、やはり鍵を握るのはアメリカですよね。アメリカと日本、さらには国連との関係についてお伺いしたいのですが。
田島:アメリカの単独主義・一国主義がこれからどう進展するかで国連や世界のあり方(新国際秩序)が変わってくるといっても過言ではないでしょう。
白岩:現在の日米関係は良好ですし、ブッシュ大統領と小泉首相の仲も良いみたいですが、そういう時だからこそ、日本がアメリカの一国主義への警鐘をならすべきだと思うんです。アメリカ追随ではなく、言うべきことは言える国にならないと駄目ですよね。しかし、一方でフランスやドイツをみていてもわかるように米国の政策に反対すると、逆に攻撃対象にも成りかねませんね。
田島:確かにそうですね。常任理事国入りの問題も、日本は場合によっては拒否権なしでも良いと言いはじめていますが、これはアメリカの支持が欲しいからであって、果たしてそれでいいのかと疑問視されています。二種類の常任理事国というのはおかしいですよ。一等国、二等国という位置づけができてしまいます。新しい常任理事国は当然拒否権をもつべきです。そうでなければ真の国連改革に結びつかないでしょう。
白岩:さて、その常任理事国入りですが。日本の常任理事国入りの動きをどう見られますか。
田島:日本は多大な貢献をしてきているので常任理事国入りはすべきだと思っています。私が懸念しているのは、国連改革に対する日本の期待感が大きいだけに、今年改革が実現しなかった場合、日本政府や国民が国連に対して冷たくなる可能性がでてくるのではないかということです。
白岩・同感ですね。日本は分担金だけみても既存の常任理事国以上に支払っているわけですし、 ODA や PKO の分野でも貢献しています。にもかかわらず今回常任理事国入りができなければ、「もう分担金を減らせ!」という声が出てきても不思議ではありません。そもそも国民の中には常任理事国入りにメリットはないじゃないかと疑問視する動きもあります。特に自衛隊の派遣が不可避になるという懸念が拭えませんが。
白岩:次にアジア関係ですが、問題が山積していますね。
田島:特に日中・日韓関係は懸念されますね。 60 年が経った今でも過去の清算ができていないことは不安の要素です。領土問題ではヨハン・ガルトゥングがよく言っていますが、できるだけ共同保有、共同開発を視野に入れた「 win-win 」のアプローチが望ましいんじゃないでしょうか。
白岩:私からみると日本の外交はこれまでに言うべきことを言ってこなかった。そのつけが今表面化しているように感じます。韓国も中国もこれまでに様々なカードを利用してきた。それに対しては日本は過去への反省もあって随分と我慢してきたという側面があるように思います。もちろん過去の問題は真摯に受け止め反省しなければなりませんが、それが外交上の主張の権利までをも奪ってしまってはいけません。今回の一連の騒動はあらゆることが同時に表面化してしまい、タイミングが悪かったかもしれませんが、こうなった以上日本の努力だけでは解決は難しいように思います。
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田島:やはり未来志向で考えないとだめですね。
白岩:日韓関係で言えば、前回の大統領選挙の時ソウルでその動きを見ていたんですが、盧武鉉(ノムヒョン)大統領は選挙中、対日外交は過去ではなく、未来志向で進めていくと言っていたので私は大きな期待感をもっていましたよ。ところが実際に就任して様々な国内問題がでてくると、国民の理解を得るためか、対日政策も 180 度転換してしまい、過去の責任追及ばかりが目立ちます。
田島:未来志向の関係づくりのためにはトップレベルでのサミット交渉をもっと頻繁にやるべきです。それも 1 日ではなく、数日かけて。とにかく合意ができあがるまで徹底的に直接交渉を続けるべきですよ。 10 の問題を協議して 3 つの合意事項があれば、それだけで進展です。少しずつでも結果を残していけばいいし、肝心なことは交渉当事国が合同で合意事項を発表し、即実行することです。
白岩:次に今後の世界の動きに少し目を向けたいんですが、やはり貧困問題が懸念されますね。私も何年か前にアフリカに行きましたが、着いたとたんこの地域は 10 年や 20 年では発展しないだろうなと確信しました。
田島:発展途上国の開発問題は複雑です。受け入れ国側が自助自律の精神に基づき努力すべき面もあれば、援助国側が大いに反省すべき面もあります。また、民間企業、市民団体の協力も不可欠です。同時に貿易構造を検討する余地もあるでしょう。
白岩:グローバリゼーションの波はもう止まりませんが、進めば進むほどに貧富の格差が大きくなり、それがまたテロの温床となっていくんですよね。
田島:その通り。悪循環です。グローバリゼーションの恩恵をこうむれない国がたくさんあります。何とかしてそれらの地域のインフラ整備、投資環境整備を進め、その地域が市場経済の流れの下で世界経済に統合されやすい状況をつくっていかなくてはなりません。
田島: 9.11 テロではアメリカはかなり怒りましたね。正直相当なショックでした。その報復としてアメリカはアフガニスタンに攻撃をしかけましたが、あそこまではある程度やむを得ないと国際社会は大目に見ていたようです。しかしその直後、アメリカがリーダーシップを発揮し、世界の指導者を集めてテロの根元を徹底的に調べ、国際的な対策を真剣に練るべきだったと思います。アメリカは絶好のチャンスを逃したような気がしますね。今の日本がその役割を果たしてくれると良いんですが。
白岩:さて、最後に日本へのメッセージをいただきたいのですが。
田島:日本にはどうも鎖国心理がありますね。島国なので外をみなくても良いということで孤立してしまっている面があります。特に若い人たちには危機感を持って頂きたい。青年海外協力隊のようなプログラムにもっと日本の若人が参加して欲しいですね。一回限り、票稼ぎのための開発援助ではなく、北欧のように息の長い活動を目指して欲しいんです。参加する若者もそれを一生の仕事として挑戦し続けて欲しいですね。お金はかかりますよ。でも例えば防衛費を 1 〜 5 %削減すれば日本の若者達のための「日本平和部隊」を創設させることも可能でしょう。
白岩:ありがとうございました。 CLUB GEORDIE でも世界で活躍する人材を育てようと現在いろんな研修のあり方を模索していますので、また是非アドバイスください。
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国際社会で本当に信頼され
尊敬される日本になって欲しいですね。 |
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<撮影:吉田 孝充(ハニーライト・イメージング)>

| 田島 幹雄 (たじま みきお) Reconciliation21(紛争解決NGO)代表/国連グローバルコンパクト顧問/AMDA名誉顧問 1934年神戸市生まれ。米国コロンビア大学院国際行政・機構修士。1961年、開発援助の分野では日本人第1号として国連職員となる。33年間の国連勤務においてUNCTAD
やTICADなどで活躍。国連本部経済社会局官房長・経済政策社会開発部長を経て、1994年に国連を退官。1995年に帰国し、関西学院大学総合政策学部教授となる。2002年の退職後にニューヨークに戻りスリランカ・ネパールの紛争解決を中心に取り組むNGOを設立。白岩正三は田島幹雄ゼミの第1期生。
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